イギリスデラルー社のOnoto(オノト)は文豪 夏目漱石が使っていた万年筆として有名です。有名な文豪と同じ万年筆を持って見たい。そう思われる方も多いでしょう。
残念ながらデラルー社は1958年に万年筆の生産を中止しており、漱石が使ったデラルーオノトは幻の一本と言われています。
写真左上がデラルーオノト(参照:丸善公式サイト様)
しかし、その後も人気が絶えなかったオノトは復活します。日本で代理販売していた丸善が「デラルーオノト」を継承したオリジナル万年筆として復刻させました。
それが「丸善オリジナル・ストリームライン・オノトモデル」(1994年~)販売から20年以上続く歴史ある万年筆です。
1920年代に人気が高かったオノト「ストリームライン」の名を冠し、レトロな風格・夏目漱石を意識した装飾が男心をくすぐります。
本日は、丸善が作った「もうひとつのオノト」を3つの視点「見た目」「書き味」「歴史」からご紹介させていただきます。
- 予算は3万円台
- しっかりと腰を据えて書ける万年筆
- 2~3本目の気軽に使えるモデル
- 人と被らない歴史背景のある万年筆
目次
マルゼンオノトモデルの特徴
ヨメ
まずは見た目の話。
カラーラインナップはブラックのみ。装飾は控えめで無骨。ゴールドとブラックのツートンが渋さをまといます。
流行に媚を売らない姿勢にダンディズムを感じる一本です。
キャップを付けた筆記時のサイズはペリカンM800とM1000の間、ほぼペリカンのスーベレーンM1000と同じサイズになります。
大きい。
- ペリカンM400 約146mm比較
- ペリカンM600 約155mm
- ペリカンM800 約166mm
- オノトモデル 約175mm比較
- ペリカンM1000 約177mm
ペリカンM400は持ち運びしやすく手帳にぴったりの可愛らしいサイズですが、オノトモデルはシッカリと腰を据えて書くのにピッタリの万年筆です。
ペンクリップには丸善オリジナルの証である”コンパス”のロゴが添えられています。
14Kペン先は漱石をイメージしたデザイン
ペン先…14金
ペン先のとぼけた顔の龍のマークは夏目漱石が使った原稿用紙のデザインが基になっています。
その原稿も再現されて、丸善より販売されています。芸が細かいですね。
腰を据えて書くための太い胴軸
胴軸のサイズ…13.1mm
デラルーオノトはエボナイト製ですが、丸善のオノトモデルは樹脂製。サイズの割に少し軽く感じるのが残念なところ。
ブリリアントウェーブと呼ばれる丸善独特のウェーブ型の模様がアクセントになっています。
こんなところにも漱石の龍がいます。
インク機構は両用式で好みに合わせて使い分ける
カートリッジ/コンバーター両用式です。プッシュ型の吸入式コンバーターがついていますがカートリッジも利用できるので、好みに合わせて使い分けることができます。
はじめてのプッシュ式コンバーターだったので、ドキドキしました。
マルゼンオノトで書く!
ヨメ
次は書き味の話。
それではストリームライン オノトモデルを使ってみたいと思います。用紙はfiurare(アピカ)を利用します。
ニブはF(細字)M(中字)B(太字)から、Mを選びました。
合わせるインクはセピア
明治をもっと意識してみよう!と思い、インクは丸善アテナインキ(セピア)にしました。セピアは夏目漱石が好んだ色です。
余の好むセピヤ色で自由に原稿紙を彩いろどる事が出来るので、
引用:「余と万年筆」夏目漱石
アテナインキは、ペリカンのエーデルシュタインのようにサラサラとしています。結構ドバドバでてしまうので、好みが別れるかもしれませんね。
マルゼンオノトの筆記感はやや柔らかく芯がある
アテナインキの特性かもしれませんがヌルヌルとインクフローがいいです。太さはペリカンのFくらい。
少し芯のあるようなカリッとした書き心地で、インクの濃淡を表現できる良い太さです。サインを書く時やA4ノートにメモを書きなぐるのにちょうど良いサイズ。
紙への引っ掛かりは感じません。私の鈍感な手先の感覚では十分すぎました。よく表現される「筆のよう」というよりは、「万年筆!」って感じです。(伝わらない)
試し書きでFも使いましたが、日本製のFの細さに感動しました。(インクはペリカンブルーブラック)
デラルーと丸善オノトの歴史
[say name=”ヨメ” img=”//oldno07.com/img/yome240.jpg”]歴史の話。[/say]
万年筆を選んでいると、それにまつわる文化や歴史を知りたくなります。背景を知って使っていくと、より愛着が湧くんです。
マサオカ
なにより、面白いんですよね。
丸善と福沢諭吉の関係
丸善は、明治2年福沢諭吉の門下生の早矢仕有的(はやし ゆうてき)氏により創業された日本の文具メーカーです。その創業理念には福沢諭吉の考えが反映されていたといいます。
万年筆を「万年筆」と名付け明治日本に広めた会社として有名で、デラルーの総代理店としてオノトをはじめとする万年筆を明治より販売していました。
その関係性から、オノトモデルは生またのですね。
丸善ロゴ”コンパス”(方位磁針)への想い
明治丸善は横浜で商社を行っていました。「世界の文化を日本へ伝えたい」という理念の基、文明開化の時代に海外との貿易を行っていたのです。
空輸が出来ない当時の流通に使われたのは船。そこから転じて、方位磁針を表す”コンパス”が丸善を象徴するマークとして使われ始めたのだと言われています。(丸善スタッフより)
文具メーカーなのに「コンパス」をロゴとして使っています。面白いですね。
オノト愛好家夏目漱石
オノトを語る上で欠かせない人物が夏目漱石。彼はよほどデラルーオノトが気に入っていたようで「この原稿はデラルーオノトを使って書いた」と作品の中で紹介したほどです。
※夏目漱石が使ったのは、ストリームラインオノトモデルの基になったデラルーのオノト。同一のものではない。
現に此原稿は魯庵(ろあん)君が使って見ろといってわざわざ贈って呉(く)れたオノトで書いたのであるが、大変心持よくすらすら書けて愉快であった。
引用:「余と万年筆」夏目漱石
私がオノトに興味をもったのも、夏目漱石が理由でした。
マサオカ
オノトモデルの話をすると、お札の人が二人も出てきて面白いです(笑)
オノトが支持を得た理由
文豪が使ったというネームバリューもそうですが、なにより「抑揚有る柔らかな書き心地とすらすら気持ち良いインクフロー」がたくさんのファンを作った理由のようです。
幻のデラルーオノト。現物をみたことさえありませんが、一度試し書きをしてみたいものです。
オノト万年筆は所有欲を満たす一本
丸善オノトは、明治文化の匂いを感じるレトロな国産万年筆でした。
このオノト、パイロット社が代理制作(OEM)を行っているので、ペン先はパイロット10号ニブが使えます。カートリッジ・コンバーターもパイロットのものが使えます。
キャップを含んだ全長が17センチと少々長いので、腰を据えてシッカリと文章を書きたい方に向いている万年筆でしょう。
実は2009年、丸善の創業140周年を記念して復刻版「漱石」が1本140万円(限定3本)で売られました。
もっと漱石に近づきたい方は探してみてはいかがでしょうか。日本の何処かにあるのではないでしょうか。
ちなみにこのオノトモデルは3万円です。
「漱石」140万、「オノトモデル」3万。ああ、安い買い物でした(錯乱)
マサオカ
戦略的衝動買いをしてしまいました。
名称 | MARUZEN ストリームライン オノトモデル ブリリアントウエーブ |
---|---|
ペン先 | 14K(F/M/B) |
胴軸素材 | AS樹脂 |
機構 | コンバーター、カートリッジ両用式 |
長さ | 174.9mm(筆記時)142.7mm(携帯時) |
太さ | 13.1mm キャップ径/14.2mm |
重さ | 23g(コンバーターセット時) |
製造国 | 日本(パイロットのOEM) |
価格 | 33,600円 |
ヨメ
購入はお近くの丸善で!!
5 件のコメント
オノトモデルの情報を求めて、こちらにたどり着きました。とても細かなデータや資料が沢山あり、非常に助かりました。
ところで、OMEという言葉が2ヶ所出てきますが、OEMが正しいのではないかと思いますので、ご確認お願い致します。
すんのすけさん、コメントありがとうございます。
とてもお恥ずかしいです…修正させていただきました。
わざわざご指摘いただいて助かります!ありがとうございました。
「しんのすけ」です。
いえいえ、こちらこそ勉強させていただきましたので。
以上、「しんのすけ」でした (笑)
これは大変失礼いたしました!!!
申し訳ございません!!
いえいえ。
チョットいじりたくなっただけです。
こちらこそ、すみませんでした。
またちょくちょく寄らせていただきます。